奥成達資料室blog版

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2007年 08月 20日

「夏のあとには秋が……」

c0069542_21265842.gif1958.10.16
都立城南高等学校一年一・二組
発行責任者:国語 北村佐太夫
読書一九五八年夏の反省
p55)
カミングズ詩集   奥成達
……この夏の終わり近く詩人藤富保男氏の手によって翻訳詩集が出版されたことは、今までアメリカ詩人集とか、世界現代詩選集だとかに、非普遍的だとかはっきりしない前衛詩学だとかいわれて、日本に影のうすかったカミングズが再認識されるよい機会であったと思う。おかげで僕は、カミングズの一貫として流れる彼の芸術の実験派のセンシビリテイとスピリットを失わない迫力を、まざまざと受け取ることができた。
藤富先生は詩の研究会の帰り、この訳詩集を出す前の七月末に、渋谷のコーヒー店、New Paulista で、ペレスブラドのマンボの中で南米男みたいに、たくましく笑っておっしゃったことがある。「徹底的に自己を隔絶することによって文明を批判し、淡いけれど詩的必然性を感情や情緒の軸に支えて虚無感をただよわす、これがカミングズの詩がもつ倫理だよ」。藤富先生は、この「カミングズ詩集」の最初に「チュウリップと煙突」という詩を例にして同じことを書いていられる。
言葉の機能を充分に活用して随意に働かせているのは、一見あまりにも奇異な詩の展開方法におもえるが、その底を流れる詩的現実は確かな圧力でおおいかぶさってくる。とにかく、何回も時間をかけて読むことによって、素晴らしい詩集であることがわかると思う。藤富先生にいただいたこの詩集は、この夏だけでなく、僕の一生の愛読書となるだろう。夏休みにたとえ何冊の小説を読んだとしても、これ程の感動と愛着を感じることはなかったのではないかと思う。

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by 4-kama | 2007-08-20 17:13 |


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