奥成達資料室blog版

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2005年 05月 05日

『欲望の迷宮』

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『欲望の迷宮』橋本克彦 時事通信社 1989
装幀:高麗隆彦 カバー装画:クロヴィス・トルイユ「驚異の宮殿」より 


p180 ) バッカスの夜
...新宿「ピット・イン」に山下トリオが出演する夜、それを聞きにくる人々がそのまま第二次「ジャックの豆の木」に流れることが起きた。...記念碑的なセッション、語り草的演奏については、平岡正明、奥成達、清水俊彦らの文筆活動にくわしく論じられ描かれている。...

ハナモゲラ語の発生は昭和五十一年二月、作家の河野典生宅の新築祝いのパーティの席上であった。この日、集まったのは山下洋輔、小山彰太、坂田彰、ジェイラルド・大下、奥成達、平岡正明などの面々...

詩人奥成達も言語感覚に新鮮な毒をもった天才である。ひところ流行語だった、「ほとんど病気」というイデオム?の発生源は奥成達という説が周辺では公認されている。何かへの執着、極端に傾いた性癖、非常識な行動パターンなどを称して、「あ、あれはほとんど病気」というのである。...救いようのない嫌味な男にはこのような言葉は使われない。傾きを持つ人間同士のつきあいが素敵なのだという思想さえも奥成の「ほとんど病気」にはこめられていた。しかし、このように現実の人間関係に裏打ちされた響きのいい語感は、巷をめぐり、回流し、テレビに登場したときには、すっかり干からびて、ただ単に「変なこと」一般に対応する言葉となって流れ行き死んでしまったのである。

また、「根が暗い」という流行語も発生源は奥成達であるといえる。それは私たちの日常をさっとめくり、暗さをうちに秘めてしか明るく振るまえない深層を示す語感で使われていたのである。...奥成達が感動した才能のいくたりか、たとえば浅川マキや三上寛が握りしめて放さない輝く闇の表象に対して「根が暗い」というのは「桜」を桜だというほどに無意味である。いわば「根が暗い」とは時代の表層をひとめくりしながら、それをたいそうな観念だとする作意さえも嫌う感性が、鮮やかにとらえた状況の本質なのだった。...しかるに「暗い」か「明るい」かは、この人間づきあいの乏しい感性の海で、馬鹿げたニ項対立の価値観のように装って人を脅かすことになった。


奥成達資料室/ジャックの豆の木新聞「有閑ジャック」
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by 4-kama | 2005-05-05 16:01 | 書籍ウェブ登場編


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